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シニア世代のスマホ利用リテラシー(2)
~女性・単身高齢者のスマホ利用スキル向上が課題~

NRI社会情報システム株式会社 高齢化社会インサイト担当 髙田 伸朗

2024/03/08

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「シニア世代のスマホ利用リテラシー(1)」では、シニア世代のスマホ普及率は高まってきているが、スマホを利用して情報収集や予約手続ができる者は60歳以上のシニアの約半数に留まっていることを示した。今回のコラムでは、このスマホ利用スキルと、性別、世帯形態、健康状態、家計の余裕度などとの関係を分析した。その結果、男女間や同居家族の状況によってスマホ利用スキルに差が生じており、スキルが高くない層にはスキル向上に向けた取り組みを行う必要性が高いことが明らかになった。また、家計に余裕のあるシニア世代の方がスマホ利用スキルが高く、趣味やスポーツなどの娯楽活動や友人等との交友活動などを通じてスマホの利用機会が多いことが伺える。

高齢者のスマホ利用スキルは男性の方が高い

NRI社会情報システムが2023年1月にシルニアス(SIRNIORS)モニターを利用し、全国の60歳代から80歳代の高齢者545名を対象として行った郵送調査をもとに、シニア世代のスマホ利用スキルの男女別比較を行った(図1)。 「スマホを利用して情報収集ができるか」という問いに対して、男性では「情報を入手できる自信がある」が23.6%、「ある程度できる自信がある」が35.1%であり、合わせて58.7%が情報収集スキルを有していると回答している。これに対して女性では、「自信がある」が17.1%、「ある程度できる自信がある」が36.0%であり、合わせて53.1%が情報収集スキルを有していると回答をしており、男性と比較して6ポイントほど低くなっている。 スマホ利用スキルにおいて男性の方が高いという結果が出た背景には、男性の方が現役時代の就労率が高く、就業の際にパソコンやスマホを利用した経験が多いことから、IT機器操作に比較的馴染んでいることや、女性の方がクチコミによる情報入手を志向することなどが挙げられる。

図1 男女別にみたスマホ利用スキル
図表1 男女別にみたスマホ利用スキル

1人住まいの高齢者はスマホを利活用できる割合が若干低い

次にスマホ利用スキルの状況を世帯形態別にみたのが図2である。世帯形態は、「ひとり暮らし」、「配偶者とのみ同居」、「2世代・3世代同居」、「その他」の4区分である。 ひとり暮らしの高齢者は、「自信がある」が11.2%、「ある程度できる自信がある」が32.6%であり、合わせて43.8%が情報収集スキルを有していると回答している。一方で、配偶者とのみ同居の高齢者では、「自信がある」が23.1%、「ある程度できる自信がある」が39.0%であり、合わせて62.1%が情報収集スキルを有しているとの回答であった。さらに、2世代・3世代同居の高齢者では、「自信がある」が21.9%、「ある程度できる自信がある」が31.3%で合わせて53.2%である。 ひとり暮らしの高齢者のスマホ利用スキルが高くない背景には、ひとり暮らしのためにスマホの操作方法などを相談できる相手がいないことや、同居家族と外出先などからコミュニケーションをとる必要がないためにスマホの利用頻度が低いことなどが挙げられよう。 今回の調査では情報収集行動についてのスマホ利用スキルを調査したが、スマホはLINEやEメールなどのコミュニケーション・ツールとしても重要である。ひとり暮らしの高齢者は、周りに相談できる相手が少なく、困りごとを解決したりコミュニケーションを取ったりする機会が少なくなりがちであるため、スマホの利用スキルの向上を図ることは、ひとり暮らし高齢者の孤立や疎外感の解消に繋がると考えられる。

図2 世帯形態別にみたスマホ利用スキル
図2 世帯形態別にみたスマホ利用スキル

健康状態が良いシニアほどスマホの利用スキルも長けている

スマホ利用スキルと健康状態との関係を示したのが図3である。健康状態については、「非常に健康である」、「まあ健康である」、「あまり健康でない」、「健康でない」の4区分である。 「非常に健康である」と回答した者(回答者の19.2%)においては、スマホを利用した情報収集に関して、「できる自信がある」が26.7%、「ある程度できる自信がある」が37.6%であり、合わせて64.3%の者がスマホの利用スキルを有していると回答している。この割合は、健康状態が良くなくなると次第に減少し、「まあ健康である」と回答した者では53.8%、「あまり健康でない」者で54.6%、「健康でない」者では40.0%に減少し、これに代わって「あまり自信がない」、「操作できない」、「スマートフォンは使わない」の回答比率が増加している。 スマホ利用スキルと健康状態との因果関係は明らかではないが、健康なシニア世代はスマホを活用して生活の質を高めていることが伺える。

図3 健康状態別にみたスマホ利用スキル
図3 健康状態別にみたスマホ利用スキル

家計に余裕のあるシニア世代はスマホの利活用スキルも長けている

スマホ利用スキルと家計の状況との関係を示したのが図4である。家計の状況は、「余裕があり将来の心配がない」、「余裕はあるが将来は心配である」、「余裕はないがなんとかやりくりしている」、「余裕は全くなくやりくりが厳しい」、「余裕は全くなくやりくりは大変厳しい」の5段階で分類している。 家計の状態が「余裕があり将来の心配がない」と回答した者(回答者の5.9%)においては、「できる自信がある」が41.9%、「ある程度できる自信がある」が29.0%であり、合わせて70.9%の者がスマホの利用スキルを有していると回答しているが、この割合は、家計の状況が厳しくなるとともに減少する。「余裕はあるが将来は心配である」と回答した者では68.9%とほぼ同じ割合であるが、「余裕はないがなんとかやりくりしている」者で53.0%、「余裕は全くなくやりくりが厳しい」者では35.0%、「余裕は全くなくやりくりは大変厳しい」者では40.0%である。 家計に余裕のないシニア世代が経済的な理由からスマホの利用を控えているという面もあるかもしれないが、家計の余裕のあるシニア世代は趣味やスポーツなどの娯楽活動や友人等との交友活動が活発であり、その結果、情報収集や予約手続、友人等との連絡などスマホの利用機会が多くなっていると考えられる。家計の余裕のあるシニア世代はスマホを利用して生活を向上させていることが伺える。

図4 家計の状況別にみたスマホ利用スキル
図4 家計の状況別にみたスマホ利用スキル
注)回答者の男女別・年代別の構成は、母集団であるモニターに準じている点にご留意ください。

NRI社会情報システム株式会社のシニアパネル ”SIRNIORS”(シルニアス)とは、全国の60歳以上の男女約7万人を組織した調査パネルです。アンケート調査や商品のホームユーステスト、実証実験参加、各種インタビューなどにご利用いただけます。

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