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シニア世代のスマホ利用リテラシー(1)
~シニア世代の約半数はスマホを活用できていない~

NRI社会情報システム株式会社 高齢化社会インサイト担当 髙田 伸朗

2023/12/06

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シニア世代のスマホ普及率は高まってきているが、全員がスマホを使いこなしている訳ではない。 NRI社会情報システムが実施した調査によると、スマホを利用して情報収集や予約手続ができる者は60歳以上のシニアの約半数に留まっている。 この割合は年齢とともに低下し、70歳以上のシニア層の半数以上はスマホを十分に利活用できていない。また、スマホの利活用スキルは地域間で差が生じている。 大都市圏と地方圏のシニアではスマホの利活用の機会に違いがあると見られることから、主に地方圏シニアのスキル向上が必要な状況にあることが明らかになった。

シニア世代のスマホ保有率は高まっているが・・・

シニア世代(60歳以上)におけるスマートフォン(以下“スマホ”と称す)の保有率が急速に高まっている。NRI社会情報システムが2023年1月にシルニアス(SIRNIORS)モニターを利用し、全国の60歳代から80歳代の高齢者545名を対象とした郵送調査を行ったところ、70歳代前半のスマホ保有率は男性93.0%、女性90.2%、70歳代後半では男性82.1%、女性79.5%となっており、シニア世代がスマホを保有することがごく一般的な姿になっていることが示されている(図1)。 シニア世代のスマホ保有率上昇の背景には、3Gサービスの終了に伴い携帯電話(ガラケー)からの買い替えが進んだことや、通信会社がシニア世代向けの端末機を開発提供し、スマホを利用しやすい料金プランを開設したことなどが挙げられる。 しかし、シニア世代のスマホ保有率の上昇をもって、同世代の社会のデジタル化対応が進展していると考えて良いのだろうか?以下では、SIRNIORS調査結果をもとに、シニア世代におけるスマホ利活用の実態を検討してみる。

図1 シニア世代のスマホ保有率(男女年齢別)
図1 シニア世代のスマホ保有率(男女年齢別)

スマホを利活用できるシニアはスマホ保有者の約半数である

シニア世代のスマホ利活用スキルの状況を把握するために、2つの設問を設けた。1つは、「あなたはスマホを利用してインターネットから必要な情報を収集することができますか?」という設問であり、スマホのブラウザを用いて検索サイトに接続し、欲しい情報を収集することができるかどうかを尋ねたものである。もう1つは、「スマホを利用して予約手続きを行うことができますか?」という設問であり、前問に比較して予約サイトへの接続やサイトから求められる情報を入力する手間の多さなど、やや難易度が高まる操作となる。 まず、「情報収集ができますか」という設問については、「情報を入手できる自信がある」が20.4%、「ある程度できる自信がある」が35.6%であり、この2つの選択肢への回答を合わせても56.0%と、情報収集を行うことを得意としている者は半分強に留まる(図2)。「あまり行う自信がない」は21.5%、「操作は行わない」が13.7%、「スマホは使わない」が8.8%となっている。「情報を入手できる自信がある」、「ある程度できる自信がある」の回答者のスマホ保有者に対する割合は61.4%である。 「スマホを利用して予約手続きができるか」については、「できる自信がある」が13.9%、「ある程度できる自信がある」が28.3%であり、併せても42.1%と4割強にすぎない。「あまり自信がない」は26.4%、「操作は行わない」は21.9%、「スマホは使わない」は9.6%である。「できる自信がある」、「ある程度できる自信がある」の回答者のスマホ保有者に対する割合は46.6%である。 この2つの質問への回答結果から見て、スマホを保有するシニア世代の約半数は必ずしもスマホを利活用できているわけではないことが示されている。

図2 シニア世代のスマホ利活用スキルの状況
図2 シニア世代のスマホ利活用スキルの状況

年齢が高まるほどスマホの利活用度合いは低下する

スマホ利活用スキルを年齢別にみたのが図3である。「スマホを利用した情報収集」、「スマホを利用した予約手続」ともに、年齢が上昇すると「できる自信がある」、「ある程度できる自信がある」の回答比率が減少し、「あまり自信がない」、「操作は行わない」の回答比率が増加している。「スマホを使わない」割合も年齢とともに増加しているが、その増加以上にスマホの利活用に自信がない者の割合が増加している。 「スマホを利用した情報収集」についてみると、60歳代では7割超が「自信がある」、「ある程度自信がある」と回答しているのに対して、70歳代前半では62.1%、70歳代後半では45.3%、80歳代では27.4%にまで低下する。70歳以上の高齢者の約半分はスマホを保有していても「情報収集」が行えていないことが示されている。 「スマホを利用した予約手続」についても、60歳代前半では5割超が「自信がある」、「ある程度自信がある」と回答しているのに対して、70歳代前半では46.7%、70歳代後半では28.9%、80歳代では23.0%にまで低下する。70歳以上の高齢者の「予約手続」のスキルは「情報収集」と比べても高くないことがわかる。

図3 年齢別にみたスマホ利活用スキル
図3 年齢別にみたスマホ利活用スキル


地方圏シニアのスマホ利活用スキル向上が課題

スマホ利活用スキルの状況を地域別にみたのが図4である。「スマホを利用した情報収集」について「できる自信がある」と回答した割合は、関東32.0%、近畿24.7%に対して、北海道・東北9.1%、中部12.6%、中国・四国・九州・沖縄13.4%と地域間で大きな差が生じている。「できる自信がある」に「ある程度できる自信がある」を加えても、関東69.3%、近畿61.2%に対して、北海道・東北42.4%、中部49.4%、中国・四国・九州・沖縄46.5%と、やはり地域による差は大きい。 「スマホを利用した予約手続」においてもほぼ同じ傾向であり、「できる自信がある」、「ある程度できる自信がある」の合計では、関東59.9%、近畿46.9%に対して北海道・東北27.3%、中部35.6%、中国・四国・九州・沖縄27.6%となっている。 スマホの利活用スキルの差異が地域間で生じている背景には、首都圏や京阪神のような大都市圏の割合が高い地域では、公共交通機関の利用の際に経路検索や時刻表検索を行ったり、店舗等の選択肢が多いために検索や予約を行う機会が多いことがあると考えられる。地方圏在住のシニア世代のスマホ利活用スキルの向上策を講じることが望まれる。

図4 地域別にみたスマホ利活用スキル
図4 地域別にみたスマホ利活用スキル
注)回答者の男女別・年代別の構成は、母集団であるモニターに準じている点にご留意ください。

NRI社会情報システム株式会社のシニアパネル ”SIRNIORS”(シルニアス)とは、全国の60歳以上の男女約7万人を組織した調査パネルです。アンケート調査や商品のホームユーステスト、実証実験参加、各種インタビューなどにご利用いただけます。

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