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社会洞察

「人生100年時代」で働き方が変わる

「人生100年時代」は、現在の子供の半数が100歳以上まで生きる世の中です。世界でも未曾有のこの社会変化が何をもたらすかを正しく予想する事は容易ではなく、だからこそ本テーマに取り組むトップランナーである日本が、「人生100年国家」をいかに築くのかは、高齢化が急速に進むアジアのみならず、欧米からも大きな注目を浴びています。

英ロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットン、アンドリュー・スコット両氏の共著である「LIFE SHIFT」で提唱されているように、高齢化は、これまで常識と考えられてきた社会の慣習、制度や生き方のロールモデルが通用しなくなる事を意味します。

これまでの生き方は、「教育」→「仕事」→「引退」という、画一的な「3ステージ」で構成されていましたが、高齢化は、単に「仕事」の期間を延ばすだけではなく、長くなった寿命の中で、多様な働き方や学び直し(リカレント教育)などのさまざまな「選択肢」の中から動的に人生を「リ・デザイン」する、「マルチステージ」の人生に変わります。もはや高齢者だけの問題ではないのです。

これまでの人生モデル(3ステージ)

これまでの人生モデル(3ステージ)

これからの人生モデル(マルチステージ)

これからの人生モデル(マルチステージ)

しかしながら、終身雇用が根付き、ステージ内に長く定着する文化を持つ典型的な「3ステージ」国家である日本が、「マルチステージ」に移行するのは容易ではありません。「ステージ」を形成する「選択肢」の充実、ステージ間を移行するための個人の意識変革やその実行をサポートする社会インフラ整備、諸制度の改革、これらすべてが揃って初めて「日本らしいマルチステージ型社会」が実現するのです。

政府が掲げるSociety5.0では、AIやIoTの革新的技術が注目を浴びていますが、あくまでも目指しているのは「人間中心の社会」です。世代や立場、地域を越えて、知識や情報が共有され、一人一人の多様なニーズにきめ細やかに対応が可能な日本ならではの社会システムは、まさに「マルチステージ」の生き方に必要なインフラストラクチャーとも言えるでしょう。

高齢者が働き、生涯活躍できる「場」を持つことが、「マルチステージ」社会には必要不可欠であることは言うまでもありませんが、高齢者が働くことは、現役世代とは異なる側面を持ちます。高齢者は、積み重ねたスキルや経験が広範囲であり、働き方も常勤からパートタイム、スポットとさまざまです。何より、地域社会とのふれあいを通じた社会貢献や、生きがいの獲得、健康促進など、高齢者ならではの想いや目的も重要な要素であり、高齢者の仕事へのニーズは実に「多様」なのです。

仕事の需要側と供給側の両方の満足度を高め、高齢者が実社会との接点を持てるような、「人に優しいコンシェルジェ的なマッチングシステム」の運営が、日本では強く望まれることになるでしょう。